3つの巨大災害
マグニチュード9クラスの巨大地震が発生すると、その後各地で火山活動が誘発される可能性が非常に高いです。
では、富士山はどうなのでしょうか?
平安時代前期、864年に富士山は大噴火を起こしています。
これは富士山の歴史上もっとも大量のマグマを噴出した「貞観噴火」です。
そして、それに次ぐ大きな噴火が江戸時代の1707年に起きた「宝永噴火」でした。
これは現在までに富士山で起きた最後の噴火でもあります。
そしてこの噴火は、巨大地震によって誘発されたものでした。
宝永噴火の直前に太平洋で2つの巨大地震が発生したのです。
まず1703年に、元禄関東地震(M8.2)が起きました。
この地震は南関東一円に大きな被害を与え、直後に起きた津波による死者を合わせると1万人以上の犠牲者が出たとされています。
そしてその35日後に、富士山は鳴動(めいどう)を始めました。
さらに4年後の1707年には、宝永地震が(M8.6)が発生しました。
この宝永地震の49日後、富士山は南東斜面からマグマを噴出し、江戸の街に大量の火山灰を降らせました。
火山灰は2週間以上も降り続き、横浜で10センチメートル、江戸でも5センチメートルの厚さになり、
上空を舞う火山灰は太陽を遮断し、昼間でも薄暗くなったという記録が残っています。
南関東での大地震、南海トラフ巨大地震、そして富士山の大噴火というこの一連の流れこそが次に起こるであろう日本の巨大災害として危惧されているのです。
富士山、南海トラフ、相模トラフは繋がっている
宝永噴火はなぜ起きたのか?
その原因は、直前に起きた2つの巨大地震が地下のマグマだまりに何らかの影響を与えたためではないかと考えられています。
具体的には、地震によってマグマだまりの周囲に割れ目ができたことで、噴火が引き起こされた可能性があるのです。
なぜ割れ目ができることで噴火が誘発されてしまうのでしょうか?
マグマには5%ほど水分が含まれています。
マグマだまりに割れ目ができることで、マグマだまり内部の圧力が下がると、この水が水蒸気となって沸騰し、体積が1000倍ほど増えるのです。
その結果、マグマは外に出ようとして圧力の抜け道である火道を上昇し、地表の火口から噴出するのです。
このようなプロセスで、直近に起きた巨大地震が宝永噴火を引き起こしたと考えられるのです。
ちなみに1435年に起きた富士山の噴火も、その2年前の相模トラフ沿いの巨大地震に誘発された可能性が高いと考えられています。
富士山は駿河トラフと相模トラフを陸側に延長した交点に位置しています。
つまり、巨大地震の影響をもろに受けやすい場所に位置していることになるのです。
見方を変えると、南海トラフ・駿河トラフ・富士山・相模トラフのすべてが連動する可能性は十分に考えられるのです。
歴史を見てみると、関東で大地震が起きた後に南海トラフ地震が起きたという例は多くあります。
関東での大地震が南海トラフ沿いの歪みに影響を与えている可能性が高いという事が考えられるのです。
また、古文書(こもんじょ)の記述を丁寧に解読して富士山の過去の噴火をたどっていくと、
富士山は50年から100年程度の間隔で噴火してきたことがわかります。
しかし、現在の富士山は宝永噴火以降300年以上も沈黙を続けているのです。
つまり、現在の富士山は今までに経験のないほどの量のマグマを地下に溜め込んでいるということになるのです。
もしかしたら富士山のマグマだまりには、500年分のマグマを溜め込む容量があるのかもしれません。
しかし、そうであっても巨大地震の発生によって先ほど述べたプロセスで噴火が起こる可能性があります。
そうなれば、これまでに経験したこともないほどのマグマが噴出して過去最悪の噴火被害になる可能性も十分にあり得るのです。
さらに現在、南海トラフでは強い歪みが溜まっており、史上最大級の規模で起こる可能性まで指摘されていて、それに加え、関東南部での首都直下地震の切迫性は現在極めて高いとされています。
関東南部での大地震、もしくは南海トラフ沿いの大地震をきっかけに、富士山の大噴火、南海トラフ巨大地震、南関東直下地震などの巨大災害が連動するということも可能性としては十分に考えられることなのです。