海溝型巨大地震の後に起こる噴火の誘発
東日本大震災が日本列島にもたらした影響は、断層の変化による直下型地震の多発だけではありません。
海域でこのような海溝型の巨大地震が発生すると、数か月から数年以内に活火山の噴火を誘発することがあるのです。
これは地盤にかかっている力が変化した結果、マグマの動きが活発化するためだと考えられています。
20世紀以降、マグニチュード9クラスの地震は世界で8回発生しています。
そして、そのほとんどのケースで遅くとも地震の数年後に震源域の近傍の活火山で大噴火が発生しています。
例えば、1952年にロシアのカムチャッカ半島で起きたM9.0の地震の翌日に、カルピンスキ火山が噴火しました。
また、3ヶ月以内に2つの火山が、さらに3年後にベズイミアニ火山が1000年ぶりに大噴火を引き起こしました。
1957年のアリューシャン地震(M9)では、地震の4日後にヴゼヴェドフ火山が噴火しました。
1960年にチリで起きた史上最大級のM9.5の地震では、2日後にコルドンカウジェ火山が噴火し、また1年以内に3つの火山が噴火しました。
1964年のM9.2のアラスカ地震の2か月後には、トライデント火山が噴火し、また2年後にリダウト火山が噴火しました。
とくに記憶に新しいスマトラ沖で起こった2つの巨大地震では、複数の火山活動に影響を及ぼしました。
例えば、インドネシアでは複数の火山が次々と活動を開始し、スマトラ島のタラン火山が火山灰を噴出し、4万人を超える住民が避難する事態となりました。
また、スマトラ島の東隣のジャワ島にあるタンクバン・プラフ火山や、火山島アナク・クラカタウの地下では、火山性の地震が起き始めました。
そして2006年5月にジャワ島のメラピ火山が噴火を開始し、たびたび噴出する火砕流によって2010年の噴火では300人を超える犠牲者を出しました。
インドネシアは日本と同じく、海のプレートの沈み込みによって火山の噴火が起きる世界有数の変動帯にあります。
国内に存在する活火山の総数も日本とほぼ同じで、両者は地下の条件が非常によく似ています。
つまり、スマトラ島沖地震後にインドネシア国内で噴火が誘発されたのと同様の懸念は、日本列島においても十分にあり得るのです。
今後数十年間は火山の大噴火に注意!
実際に日本でも、東北地方で起きた巨大地震のあとに火山活動が活発化した記録が残っています。
例えば、東日本大震災と同種類の地震とされる869年の貞観地震では、その2年後に秋田県と山形県の県境にある鳥海山(ちょうかいさん)が噴火しました。
また、46年後の915年には青森県と秋田県の県境にある十和田湖(とわだこ)が大噴火し、
その火山灰は東北地方を覆ったばかりか、800キロメートル離れた京都にまで及んでいました。
ちなみに十和田火山は定期的に巨大噴火を起こしてきた日本有数の活火山であり、
「十和田湖」とはその結果として形成されたカルデラ湖のことをいいます。
この915年の十和田湖の大噴火は日本列島で過去2000年間に起きた噴火では最大規模のものでした。
そして、東日本大震災以後もいくつかの活火山の地下では活動が大きくなり、地震が増加しています。
・浅間山(あさまざん)
・草津白根山(くさつしらねさん)
・箱根山(はこねやま)
・焼岳(やけだけ)
・乗鞍岳(のりくらだけ)
・白山(しらやま)
など、20個ほどの火山の地下では東北沖での地震発生直後から小規模の地震が急増しました。
そして2014年9月には、御嶽山(おんたけさん)で60名以上の犠牲者を出す戦後最大の噴火災害が発生しました。
このように東日本大震災が起きた後の日本列島では、それ以前に比べると明らかに火山活動が活発化しているのです。
このような3・11で生じた地盤の歪みが元に戻るには何十年もかかると考えられます。
そのため、今後数十年間は、すべての活火山を厳重に監視する必要があります。
そして、もちろんそれは富士山も例外ではないのです。