南海トラフ地震警戒情報

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地震や津波によって壊れた施設を元よりも頑丈に建てると補助が出なくなる!?防災を阻む「原形復旧主義」

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災害復旧のための法律


「復旧」とは災害による被害を回復し、元に戻すことです。


災害対策基本法の規定では、復旧の実施責任は被災地の地方自治体の首長にあります。



しかし、相当な費用がかかるため、財政規模の小さい地方自治体には支援が必要で、国からの補助を受ける必要があります。


そのためにあるのが次の3つの法律です。



「公共土木施設災害復旧事業国庫負担法」


「農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律」


「公立学校施設災害復旧費国庫負担法」


これらが復旧の基本3法であり、災害時の国庫補助率は以下のように、それぞれの法律で決まっています。



河川、道路、下水道、公園などの公共土木施設の被害に対して、復旧にかかる費用の6~8割程度を補助。


公立学校、公営住宅、児童福祉施設などの公営施設に対して、2分の1から3分の2を補助。


農地、林道や農林水産業共同利用施設の被害に対して、8割程度を補助。



財政支援に対する強い期待


災害対策基本法は国の補助などについて「災害復旧事業費の決定は適正かつ速やかにしなければならない」と定めて、国の財政出動を迅速に行うことを求めています。


毎日新聞が東日本大震災から1年目に、岩手、宮城、福島3県の42市町村長に実施したアンケートによると、約4分の3の首長が国の財政支援を肯定的に評価しています。


その一方で、今後の復興に向けた最大の障害・課題は「財源」であると述べる首長も多く、財政支援に対する期待が強いことがわかります。



被災自治体は、復旧事業を行う場合、


補助額がいくらなのかが確定してから、可能な復旧事業を決めるというケースと、


先にやるべき復旧事業を決めてから必要な予算を国に要求するケースの2つのケースがあります。



前者の立場では、国による予算化を待たねばならず、被災者を置き去りにする危険があります。


一人一人の被災者の生活に目線を向けるなら、一刻も早く復旧に取りかかるほか選択肢はないので、困難な理由があろうと、どこの自治体であろうと、復旧事業を先行しなければならないのです。



「施設」以外は復旧対象とならない


国庫による負担金・補助金の支出を行うのは各省庁ですが、財務省が大きく関与しています。


財務省は、災害復旧の意味を「災害にかかった施設を原形に復旧すること」としています。


これは公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法などに基づいています。



この定義によれば、復旧対象は「施設」なので、施設ではないものは対象にはならないことになります。


例えば、地域経済や生活基盤などの目に見えないものは、破壊されても復旧の対象にはなりません。


また、「原形に復旧すること」ですので、改良を加えて、例えば想定外の津波だったのを教訓に堤防を高くしたり、港湾の強度を高めたりすると、復旧の対象から外れてしまうのです。



原形復旧への批判


こうした原形復旧に対する強い批判は昔からありました。


たとえば、沿岸部の津波被災地を原形に復旧することは、安全を無視した非現実的な対応だと捉えられます。



三陸沿岸部のローカル路線である三陸鉄道は住民にとって貴重な公共交通機関であり、回復が待ち望まれています。


津波被害による復旧費は180億円と見込まれているところ、「鉄道軌道整備法」で定める国庫補助率は25%しかないため、赤字で第三セクター化された路線が自力で復旧することは不可能です。


しかも、原則として「原形復旧」に限られるため、安全・防災のために路線変更などを行うと補助対象から外れてしまいます。


ここにも原形復旧主義の弊害が表れているのです。



災害対策基本法には、再度災害防止のための施設の新設・改良については十分な配慮が必要であるとの定めがあり、「改良復旧主義」への配慮が示されています。


原形復旧主義の根拠となっている公共土木施設災害事業費国庫負担法などでも、原形復旧が著しく困難または不適当な場合は代替措置についても災害復旧事業とみなすという規定があります。


しかし、改良復旧の実現には、原形復旧と比べて非常に高いハードルを越えなければなりません。



新潟県中越地震では、新潟県は「創造的復旧」という言葉を掲げて、復旧のありかたを柔軟で豊かなものにしようとする取り組みをしました。


そして「東日本大震災復興基本法」では、基本理念の条項に、「被害を受けた施設を原形に復旧すること等の単なる災害復旧にとどまらない」との文言を入れて、原形復旧主義を突破しようという意気込みを示しています。



国の補助率をかさ上げするための法律


国の補助率をかさ上げする目的で作られた、「激甚法」というものがあります。


戦後に起きた災害では、この補助率のかさ上げを求めて、被災地から永田町へ陳情合戦が繰り返されるのが常でありましたが、その都度個々に対応するため、不公平だとの批判がありました。


そこで、災害対策基本法の制定に合わせて激甚法が制定され、補助率のかさ上げを法律で定めました。



被災自治体としては、激甚法の指定さえ受けられれば交付税も含めて復旧費のほとんどが国の負担となるため、復旧事業についてある程度の見通しをつけることができます。


また、激甚法は一人一人の被災者にも優遇措置が設けられています。


たとえば、農林水産業に対しては、国庫による特別な補助や融資を行うことができます。


また、中小企業に対しても保証や条件の緩和を認めたり、母子への特別の貸付金や、災害公営住宅の補助、雇用保険の特例なども認められています。



緊急時に国が交付する「特別交付税」


いくら国から手厚い補助が行われたとしても、地方に特別の負担がかかることには変わりありません。


今では、財政に余裕のある自治体は皆無に等しく、特別の資金調達が必要となってきます。



その方法としては、借金をするか国にお願いするかしかありません。


そこで、災害などの緊急時に国が交付する「特別交付税」というものがあります。



特別交付税は、その使途について総務省と地方自治体の間の協議を経る必要がありますが、細やかな用途に対応しています。


東日本大震災の2011ねん12月の交付内訳を見ると、被災地域の自治体への応援職員や被災者の受け入れ、被災児童のスクールバス、原発事故の除染・風評被害対策など、身近で目に見える地方行政の後ろ支えになっています。


また、総務省は、人員不足に悩む自治体に対し、定年退職した職員の再任用、職員OBの被災地派遣などを助言し、その給料や旅費などの経費をすべて特別交付税で措置するとしました。