南海トラフ地震警戒情報

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防災における『知識』の重要さと日本の理科教育の課題!

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日本でも特に活断層が多いのは近畿地方


1995年1月17日、阪神・淡路大震災が発生しました。


このとき、現地の人々は皆口をそろえて「関西に大地震が来るなんて信じられない」と言っていました。



しかし、阪神・淡路大震災が起きる20年も前から、地元の科学者は大地震への警告を発していたのです。


例えば、神戸大学の三東哲夫教授は、「活断層が日本で一番多いのは近畿である」とメディアで警鐘を鳴らしていました。


実際、神戸の周辺は日本有数の活断層が密集した地域なのです。


ところが地元では、「大地震は東海地方や関東で起きるもので、関西は関係ない」と信じられていました。



災害を大きくする「正常化の偏見」とは?


このような現象は、災害心理学で「正常化の偏見」と呼ばれています。


たとえ事態がよからぬ方向に向かっていても、人間は「自分だけは大丈夫」と勝手に判断してしまうのです。



正常化の偏見による有名な事例が、2003年2月に韓国テグ市の地下鉄火災で起きました。


地下鉄の車両が放火され198人の死者を出した事件です。


列車内とホームは火炎と煙に巻かれ、阿鼻叫喚の地獄絵図さながらのことが起きたのです。


しかし、火災が起きた直後、煙が漂ってきても多くの乗客は逃げずにただ座っているだけでした。


車内ではだれも避難しようとせず、まもなく一気に入り込んできた黒煙に巻かれてしまったのです。



この事件では、乗客が車内の様子を撮影したビデオが残っていました。


ビデオを撮ろうと思うくらいのんびりした雰囲気だったのでしょう。


これが「正常化の偏見」の怖さです。


もし彼らに地下での火炎に関する知識があれば、異変を感じた直後から避難を行い、被害は軽減できたはずです。



これと同じことは、阪神・淡路大震災以降も日本で起きています。


2004年に紀伊半島南東沖地震(M7.4)が発生し、気象庁はただちに津波警報を発令しました。


和歌山県や三重県南部に高さ1メートルの津波が来る恐れがあると発表し、避難勧告も出されました。


それにも関わらず、この地震の際に避難した住民はなんと1割以下しかいなかったのです。


それどころか、わざわざ津波がどんなものなのか海岸まで見に出かけた住民までいました。


幸い犠牲者は出ませんでしたが、防災上、大きな課題を残しました。



和歌山県の沿岸部は、南海地震や東南海地震が起きれば必ず津波に襲われる地域です。


市町村でも津波対策を精力的に行っています。


避難道路がつくられ、海岸近くには避難場所として「津波避難タワー」が建設されています。


しかし、いくら避難のための施設をつくっても、人々に危機意識がなければまったく役に立ちません。


ハードよりもソフトに弱点がある、という自然災害特有の問題点が浮き彫りとなりました。



なぜ津波警報がでると人は海を見に行くのか?


未知の災害に遭遇した場合には、人間が正常化の偏見に支配されやすいことを知っておく必要があります。


残念なことに、東日本大震災で津波の犠牲になった方も多くはこの「正常化の偏見」が大きな原因でした。


「自分には関係ない」というのは、なんの根拠もない思い込みです。


人間は自分が経験したことのない出来事を想像するのが苦手です。


そのため、洪水警報が出れば川を見に行き、津波警報が出ると海を見に行く人が跡を絶たないのです。


2004年のインド洋大津波によって生じた25万人を超える膨大な犠牲者には、こうした人々が多数含まれていたことが、後の研究によってわかってきました。



避難勧告が出た際にまず障壁となるのは、「自分だけあたふた動いてはカッコ悪い」という心理的な見栄です。


しかし、人間のこうした心理をいくら責め立てても何も解決しません。



では、どうすればいいのか?


それは「災害に関する正しい知識を持つこと」です。


災害を前にして見栄を張ってしまった結末を知っていれば、愚かな行動をとらなくなります。


ビジネスなどでもよく使われる格言「知識は力なり」というのは、防災にも役に立つのです。



日本の理科教育の課題


また、災害に関して、無知が引き起こすものとして「正常化の偏見」の対極にあるといえるのが「風評被害」です。


2004年に起きた長野・群馬県境にある浅間山の噴火では、近くにある軽井沢で宿泊客のキャンセルが相次ぎました。


また2009年に伊豆半島で起きた群発地震は、年末年始の温泉客を大幅に減らしました。



これらは噴火や地震に関する正しい知識をもたないために起きた現象です。


断片的な情報に過剰反応し、短絡的な思いこみが独り歩きし、大きな経済的損害が生じました。


このようなことが起きないためにも、専門家は正しい知識をわかりやすく、かつ迅速に伝えなければなりません。



このような風評被害の問題は、実は日本の教育にも直結しています。


日本の学校教育での課題は、主に「金融教育」と「理科教育」にあると言われています。


たとえば地震や噴火のメカニズムなどを扱うのは「地学」という分野です。


しかし、残念なことに全国の高校生の地学の履修率は7%以下なのです。


つまり、大多数の日本人の国土災害に関する理解能力は、中学校で習った知識レベルにとどまっているのです。


地震大国、火山大国である日本に住んでいる我々がその正しい知識を学ぶ機会が極端に少ないのです。



地学の基礎だけでも学べば、私が「防災」ではなく「減災」という言葉を主に使っている理由がわかります。


災害を防ぐことは不可能です。
そのため、災いを少しでも減らすという意味で防災よりも減災という言葉の方が現実的だと考えているからです。


義務教育などで、日本の全国民が地震や噴火の正しい知識(地学)を学ぶ機会がもっとあれば、間違いなく、今回話したような「風評被害」や「正常化の偏見」による被害はかなり減少するでしょう。



たとえば東日本大震災の場合、避難する時間は十分にありました。


それなのに2万人近い膨大な犠牲者を出したのは、やはり「正常化の偏見」にあります。


被災者の人々に地震、津波の正しい知識があれば、それだけでこの犠牲者の数はどれだけ減らすことができたでしょうか。


あれだけ大規模な災害でも、皆が正しい行動をとっていれば、もしかすると犠牲者は0にできた可能性だってあるのです。


人が正しい行動をとるために必要なのは「知識」です。


その知識を学ばないということ自体が危険であるということを、この国に住む我々日本人は理解をしなくてはいけません。


巨大地震から身を守る為の対策と避難後に生き延びるための準備! - 南海トラフ地震警戒情報