南海トラフ地震警戒情報

Twitterにて減災活動、情報発信を行っています。@T1ZEg2jynaj9lQ7


北海道胆振東部地震は苫小牧CCS実証試験によって誘発されたのか?

f:id:tsukasa-fp:20190227212813j:plain



苫小牧CCS大規模実証実験とは


実証試験は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構がJCCSに委託し、実施されている事業です。


引き続きエネルギー基本計画に沿って、CCS技術の2020年頃の実用化を目指し、日本初のCCS一貫システムを安全かつ安心に実証することを目的としています。


苫小牧沖合約3km、海底からの深さ約1.0~1.2kmの貯蔵層へのCO2圧入を2016年4月に開始し、CO2累計圧入量が本年8月中旬に20万トンを超えました。


また、同沖合約4km、同深さ約2.4~3.0kmの貯蔵層への試験圧入を本年2月に開始し、98トンのCO2を圧入しました。



CCSとは?


Carbon dioxide Capture and Storageの略で、二酸化炭素(CO2)の回収、貯蔵を意味しています。


人類は、豊かな生活を築くために、長年にわたって地中に埋まっていた石油、石炭等の化石燃料を取り出して消費してきました。


化石燃料を使用するとCO2が発生し、その結果大気中のCO2が地球温暖化の原因のひとつになると言われています。



CCSは、工場や発電所などから発生するCO2を大気放散する前に回収し、地中貯蔵に適した地層まで運び、長期間にわたり安定的に貯留する技術です。


二酸化炭素は、地下1000m以上深くにあるすき間の多い砂岩などからできている「貯蔵層」に貯留します。


貯留層の上部は、二酸化炭素を通さない泥岩などからできている「遮へい層」で覆われていることが必要です。


遮へい層がふたの役目をして、貯留された二酸化炭素が地表に出ることを防ぎます。



世界の主要なCCSプロジェクト


ノルウェー(スライプナー)
特徴:世界初のCCS(海底下)
圧入量:年間100万トン
圧入開始:1996年


カナダ(ワイバーン)
特徴:CO2削減を意識した世界初のEOR
圧入量:年間300万トン
圧入開始:2000年


カナダ(バウンダリーダム)
特徴:石炭火力発電からの世界初のCO2回収
圧入量:年間100万トン
圧入開始:2014年


ブラジル(べトロブラス)
特徴:南米発のEOR(海底下)
圧入量:年間約100万トン
圧入開始:2013年


米国(センチュリー)
特徴:世界最大の圧入量
圧入量:年間840万トン
圧入開始:2010年


豪州(ゴーゴン)
特徴:豪州初の大規模CCS
圧入量:年間340~400万トン
圧入開始:圧入準備中


日本(苫小牧)
圧入量:3年間で30万トン以上
圧入開始:2016年4月より



海外では、CO2を分離・回収し、地中に貯留する大規模プロジェクトが実施されています。


米国では、40年以上も前から油田にCO2を圧入し、石油の回収量を増やす事業も数多く行われています。


日本で行われているプロジェクトは世界的に比較すると、極端に規模が小さいことがわかります。



苫小牧CCS実証試験のスケジュール


苫小牧での実証試験は、2012年度から2020年度までの9年間が予定されています。


f:id:tsukasa-fp:20190227071221p:plain
このうち2012年度から2015年度までの4年間は試験準備期間で、実証試験に必要な諸設備の設計、建設試運転、坑井の設計・掘削、モニタリングシステムの設計・設置を経済産業省の委託事業として遂行しました。


地上設備の建設と、圧入井の掘削も2015年10月末までに終了し、2015年度末には地上設備の試運転を含むすべての準備を完了しています。


2016年度から2018年度までの3年間はCO2の圧入を行う計画で、CO2圧入を2016年4月に開始しています。



CO2を安全かつ安定的に貯留するため、圧入開始前、圧入中、圧入後にモニタリングを実施します。


そのために圧入CO2量、地層圧力、地層温度を2坑の圧入井に設置した流量計、温度計、圧力計を使ってモニタリングするほか、CO2の圧入と自然地震の発生には関連性がないこと、自然地震が貯留には影響を及ぼさないことを確認するために、自然地震および地下での微小地震のモニタリングを、3坑の観測井、常設型OBC、OBSを使って実施します。



北海道胆振東部地震による影響と地震との関係


北海道胆振東部地震による影響や地震との関係について、日本CCS調査株式会社は広い専門家の方々からの意見等の議論概要を公開しています。


2018年9月6日に胆振地方中東部の深さ37kmでM6.7の地震が発生し、北海道厚真町で震度7、苫小牧における大規模CCS実証試験センターでは震度5弱を観測しました。



実証試験センターでは、150ガル以上の地震の揺れを検知した場合、CO2分離・回収/圧入設備を緊急停止する安全システムを採用しています。


ただし、CO2供給元の都合により9月1日からCO2含有ガスの供給が停止しており、地震発生時には地上設備の操業及び圧入は既に停止中であったため、今回の地震による緊急停止は生じませんでした。



次に問題となっているのがCO2圧入によって、この北海道胆振東部地震が誘発されたのではないか?というものです。


これについてJCCSは、CO2圧入開始前の2011年に圧入量75万トンを実施した場合の地層の圧力上昇の計算に基づき、CO2圧入によって微小地震が発生する可能性はないことを確認しました。


CO2圧入による震源断層への影響を検討するために実施したシミュレーションでも、影響はないと評価されました。



また、苫小牧の圧入地点では微小地震を常にモニタリングしています。


そのデータを見てみると、圧入開始以来、CO2圧入地点近傍での微小地震はまったく検出されていないことが明らかになりました。


そのため、CO2の地中貯留と、約30km離れた場所で発生した胆振東部地震との関係はないとしています。



胆振東部地震の発生メカニズム


本地域周辺の地下構造は、太平洋プレートが千島海溝に斜めに沈み込み、引きずられた千島列島の地殻が東から押し寄せ東北日本弧に衝突していると考えられています。


この時、千島弧の端は、地殻の上部が衝上して日高山脈を形成し、地殻の下部はプレートに沈み込み、東北日本弧も引きずられて沈み込み日高山脈付近とその西方では地殻が厚くなっていると考えられています。
f:id:tsukasa-fp:20190227152915j:plain


胆振東部地震はこのような地殻の折れ曲がった付近で発生したと考えられ、9月6日の国の地震調査委員会では、「胆振地方東部・日高地方から浦河沖の周辺では、陸域で通常発生する地殻内の地震よりも深い場所でも地震が多く発生している特徴が見られ、今回の地震活動はこのような特徴がある地域で発生したものである。」との見解が示されています。


また、気象庁公表の胆振東部地震の震源は、基盤岩中の深さ37kmにあり、CO2を圧入している堆積層と震源のある基盤岩層とは連続性がない別の地層内であると報告しています。



CO2圧入が今後誘発地震を引き起こす可能性


CO2地中貯留を行った場合、断層を含む岩盤の亀裂に存在する流体の圧力変化によって亀裂面の摩擦力が低下し、蓄積された歪みが解放されて地震が誘発される可能性がある、との指摘がありました。


それを受け、本事業開始前の2011年、国立研究開発法人産業技術総合研究所により「CO2圧入による地震誘発の可能性についての評価」が実施されました。


内容は、想定されるCO2総圧入量75万トンにより岩盤中の亀裂面がすべりやすくなる可能性を、応力変化のシミュレーションによって検討するというものです。


この検討では、地層水の圧力上昇とすべり傾向係数の空間分布の時間変化を見積もり、いつ、どこで地震が誘発される可能性が高くなるかが推定されました。


その結果、圧入地点では断層が通常時と比べてすべりやすくなるような場所が検出されず、CO2圧入により地震が発生する可能性はないと評価されました。


圧入地点から30km以上も離れた場所で発生した北海道胆振東部地震が関係しているとは到底考えられないと言えます。



微小地震のモニタリング結果


本事業を行うにあたり、圧入地点周辺に地震計を複数設置し地震観測を行っています。


さらに周辺のHi-net観測点のデータを加えて、東西約50km、南北約38km、深さ約50kmの範囲を対象に地震活動をモニタリングしています。


また、周辺に設置してある地震計では、マグニチュードマイナス0.5以上の振動を検知することが可能です。



2015年2月から2018年9月末までの期間に検知した振動は、圧入開始前の2015年4月から8月にかけて9回、圧入開始後の2017年8月に3回の微小振動をモニタリング範囲内で検知しています。


これらの微小振動はいずれも深度約6km以深で発生しており、当地域で通常発生し得る極小規模の自然地震に対する振動を捉えたものでした。


それ以降は、モニタリング範囲内で発生した微小振動は検知されておらず、


また、平成30年の北海道胆振東部地震の発生前後にもこのモニタリング範囲内で微小振動イベントは検知されていないため、関連性は考えられないということがほぼ証明されます。



地下水の移動によって地震があらゆる場所で起きる?


ネット上では、地下へ二酸化炭素を入れると、その体積分地下水が移動し、それに伴い地盤がずれるため、地震が発生するのだと言われています。


しかし、地下水は帯水層と呼ばれる地下水を貯められる層に存在していて、


地下水は基本的にその帯水層でしか存在できません。


CCSは、そこに二酸化炭素を超臨界流体として溶かし込むのですが、それによって地下水が移動するとは到底考えられません。


考えられるのは、地下水の量や水圧の変化でしょう。



ただ、CCSの影響で地震が発生する可能性を否定はできません。


二酸化炭素回収・貯留が地震を引き起こすという危険性は以前から指摘されており、研究が行われていますが、まだ明らかになっていることが少ないのが現状です。


しかし、広い専門家からの意見、観測データなどから、北海道胆振東部地震とCCSの関連性に関しては、ほぼ考えられないといってもいいと思います。