南海トラフ地震警戒情報

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なぜ2回も大地震が起きたのか?熊本地震と阿蘇山噴火の関連は?

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主要活断層沿いで2回起きた大地震


2016年4月14日、熊本市東部付近の地下11キロメートルを震源とするM6.5の地震が発生し、震度7の強烈な揺れが熊本県上益城群益城町を襲いました。


この地震は直後の余震分布や地震波の解析から、すぐに日奈久断層帯の北端部分が活動したことがわかりました。


そのため、翌日の15日には複数の調査チームが現地に向かい、日奈久断層帯の調査を行っています。


その調査報告によると、断層沿いに若干の亀裂などは認められるものの、明瞭な地震断層は見当たらないということでした。



そして、日付が変わったばかりの4月16日未明の午前1時25分頃、最初の地震の4.5キロメートル北を震央とするM7.3の地震が発生し、益城町を再び震度7の激震が襲いました。


このように短時間に同じ地点で震度7が2回記録されたのは、観測史上初めてのことで、まさに想定外の結果となりました。


この地震により、地表に長さ約30キロメートルの地震断層が顔を出したのです。



熊本地震による地殻変動


国土地理院の報告によると、地上の電子基準点と人工衛星からのデータ解析により、震央を中心として九州中部の広範囲で大きな動きが検出されています。



熊本市の観測点では76センチメートル北東に地面が動き、南阿蘇村の観測点は98センチメートル南西に移動しました。


両地点それぞれ、北東-南西方向に分布する布田川断層の北側と南側に位置します。


布田川断層と日奈久断層北部に沿って、右横ずれが生じたことがわかります。



また、この右横ずれ運動によって、熊本県北部の菊池では45メートル北に動き、震源から約20キロメートル南に位置する泉では26センチメートル南に動きました。


熊本県が南北に引き延ばされたこともわかります。


また、布田川断層の北側では1メートル以上沈降する動きも観測されています。


横ずれだけでなく、上下の動きをともなっていたこともわかったのです。



断層変位による道路や橋、建物などの被害も多数生じた


熊本地震では、地震動による建物倒壊だけではなく、断層変位による被害も多数生じました。


例えば、地震の強烈な揺れには耐えたのにも関わらず、断層変位によって住宅の基礎にずれが生じ、倒壊、もしくは傾九などの被害が生じたのです。


ただ、今回の熊本地震の場合は幸いにも水平横ずれが主体で、上下変位がそれほど顕著ではありませんでした。


もしこれが逆断層など縦に大きな動きをともなうと、断層沿いの家屋倒壊はさらに酷いものになっていました。



このような断層変位による被害は、事前に活断層分布を把握し、避ける、または対策をとることで被害を防ぐことができます。


活断層分布図をみると、活断層の位置と地震断層がほぼ一致します。


しかし、地図をどんどん拡大していくと多くの地点で位置がずれたり、分岐したり、異なった向きの断層が出現したりします。


つまり、一部の明瞭な断層変位地形の部分を除いて、ピンポイントでの予測は難しいというのも実状です。



なぜ震度7が2回も連続して起きたのか?


布田川断層帯と日奈久断層帯の区分については研究者間で意見の相違があります。



地震本部によると、布田川断層帯は、阿蘇外輪山の西側斜面から宇土半島の先端まで延びる長さ64キロメートルの活断層帯で、その連続性や地質構造などから、東から布田川区間、宇土区間、宇土半島北岸区間の大きく3つの活動区間にわけられています。


一方、日奈久断層帯は、益城町から八代市を経て八代海南部に抜ける約80キロメートルの活断層帯で、北から高野-白旗区間、日奈久区間、八代海区間の3つに分けられています。



それぞれ各区間が単独に活動すると以下のような規模の地震が発生するとされていました。


布田川断層帯全体(M7.8~M8.2)
宇土半島北岸区間(M7.2)
宇土区間(M7.0)
布田川区間(M7.0)


日奈久断層帯全体(M7.8~M8.2)
八代海区間(M7.3)
日奈久区間(M7.5)
高野-白旗区間(M6.8)



実はこのような断層帯区間は、熊本地震の発生する3年前に改訂されたものでした。


その前の2002年の評価では、この2つの断層帯は一体のものであるという認識があり、「布田川・日奈久断層帯」と名付けられていました。



しかし、2016年の熊本地震では、結果として布田川断層帯の布田川区間と日奈久断層帯の高野-白旗区間の組み合わせで動きました。


これに未発見だった阿蘇カルデラ内の約5キロメートルの区間を合わせて、約30キロメートルが連動しました。


宇土区間の一部もわずかに動いたのですが、基本的には2002年時の「布田川・日奈久断層帯」という認識が正しかったことになるのです。


つまり、宇土半島から阿蘇外論山に80キロメートルにわたって延びる布田川断層帯があり、その中央部で日奈久断層帯が合流する「T字型」(画像上)ではなく、布田川断層帯が屈曲部を貫いてそのまま日奈久断層に連続する「への字型」(画像下)の構造だったようです。


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益城町は断層帯の交差する地点に位置していた


では、なぜ益城町は28時間を置いて震度7を2回も経験したのでしょうか?


実は益城町は、運悪く布田川断層帯と日奈久断層帯の交差する地点にちょうど位置していたのです。


どちらの断層帯が動いても強震動が起こる位置にあります。


さらに「布田川・日奈久断層帯」が一連のものとする考え方では、ちょうど断層が屈曲する位置になります。



これがなぜ2回も震度7の地震に襲われる原因になるのか?


断層の不連続部や屈曲部ではとくに大きな歪みが加わりやすく、破壊を止める地点になるとともに、次の地震の破壊開始点になりやすいという研究論文が複数あります。


まさにこの研究論文が実際に証明されたとも言えるのかもしれません。



断層が真っ直ぐだと断層中の歪みの分布は均質になりやすいのですが、屈曲しているとその部分に力が集中します。


そのせいなのか、日奈久断層帯北端付近は、熊本地震前から日本列島の活断層野中でもかなり地震活動が高く、中小規模の地震が多く発生していました。


思い返せば、この地震活動自体が2016年の大地震の先行現象であったとも考えることができたかもしれません。



両方が本震だった


気象庁が「前震」と呼ぶ4月14日の地震は、地表の日奈久断層直下に位置するほぼ鉛直の断層によるものです。


一方で、16日に起きたM7.3の地震の震源断層は北西に約60度で傾斜しています。


ともに震源断層を地表まで延ばすと、日奈久断層の位置にきます。



当初、M7.3の地震による日奈久断層側の震源断層は、14日の断層が再度動いたとの見方がありました。


しかし、余震分布などを詳しく調べると2つの地震の震源断層は別ものだということがわかりました。


つまり、両方とも各断層帯で発生した地震の「本震」だったという認識が正しいのです。



阿蘇山の爆発的噴火は熊本地震により誘発されたのか?


熊本地震は阿蘇山という第一級の活火山近傍で発生しています。


そして約半年後の10月に実際に阿蘇中岳第一火口で1980年以来という爆発的噴火が起こりました。


火山と地震は双方向に影響し合う関係にあります。


大地震が火山噴火を誘発したり、反対に火山噴火が大地震を誘発したという事例は世界的に多数報告されています。



国内でも、南海トラフ沿いで発生した1707年の宝永地震の49日後に、富士山で宝永噴火が発生したという事例があります。


このような巨大地震による噴火誘発のひくみには様々な諸説があります。


最もシンプルでわかりやすいモデルが、地震によってマグマだまりが圧縮されることによる、マグマの絞り出しです。


スポイトから水を押し出すようなイメージです。



また、逆に地殻変動でマグマだまりが膨らむことによってマグマ自体の圧力が減少することで噴火を誘発するという説もあります。


減圧によってマグマ中に溶けていた揮発性物質が泡となって上昇してくるというものです。


ビール瓶の栓を抜いたときに泡が吹き出てくるようなイメージでしょうか。



もし、熊本地震が噴火を誘発したとするならば、阿蘇山部分の地殻が引っ張られ、減圧により噴火が起きたと考えることができます。



次に、火山活動が大地震を誘発する原因はなんなのでしょうか?


例えば、2000年の三宅島の噴火とともに約2ヶ月以上にわたって伊豆諸島で群発地震が発生しました。


そのうち、M6以上の大地震は5回も発生しています。


三宅島噴火に関係する地下のマグマの移動によって急激な地殻変動が起こり、地震活動が誘発されたと考えられます。



また1914年の桜島の大正噴火では、噴火にともなってM7.1の地震が発生し、家屋倒壊などの大きな被害が発生しました。


このように、火山活動にともなう地殻変動やマグマ、熱水の動きによって周辺の断層が刺激され、地震が発生するのです。


そのため、噴火警戒レベルがあがった場合、噴火だけではなく周辺の地震活動にも注意しなければならないのです。


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