南海トラフ地震警戒情報

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南海トラフ地震発生帯掘削計画 巨大地震は誘発されるのか?

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プレート境界を掘削する目的は?


2018年10月から行っている南海トラフにおける集中的な科学掘削の総仕上げとして、さらに2000m深く掘り、海面下7000mに眠るプレート境界断層への到達をめざし、巨大地震を引き起こすひずみエネルギーが蓄積される領域がどのような岩石からなり、どのような状態なのかを明らかにします。


紀伊半島沖(熊野灘)南海トラフは、大規模な揺れと津波を伴った1944年東南海地震の破壊域にあり、かつ掘削によって到達可能な深度にプレート境界断層および巨大分岐断層があります。


この海域において沈み込み帯浅部から深部までの複数地点で掘削を行い、コアリングと長期孔内計測により、断層の地震性滑りと非地震性滑りを決定づける条件(すなわち地震発生条件)を明らかにすることを目的としています。



何で掘っているのかが全く理解できないひともいるかもしれませんが、実際は掘ること自体は目的ではありません。


地下のコアを調べることが目的で、そのためには、掘らざるを得ないのです。


ちなみに「コア」とは、地下の地層から採取される岩石サンプルのことです。


掘削機は、地面を掘りながら削りカスを外に持ち出すようになっています。


この削りカスが重要な岩石サンプルとなるのです。



このコアを調査すると本当に様々なことが発見できるのです。


例えば、コアから過去の地震の痕跡を発見し、これにより巨大地震が起こる間隔の予測などに役立ったりします。


また、2011年東北地方太平洋沖地震の調査で行われた掘削では、これまで地震を起こさないと考えられていたプレート沈み込み帯先端部が、実は地震性高速滑りを起こすこと、またそのメカニズムが明らかにされました。



現在の状況は?


今回の掘削計画は、次の4つの段階で実施されます。
現在は第1段階が完了しております。


第1段階「BOP海底設置」


掘削地点に移動後、船の位置を保持するために、自動船位保持システムと連動するトランスポンダを海底に設置し、掘削孔の蓋を回収する。


その後、船上ではドリルパイプやライザーパイプなどの掘削機材の組み立てを行い、海底に設置する噴出防止装置とそれに接続するライザーパイプの運用試験を行う。


ライザーパイプを接続した噴出防止装置を海底に降下し設置する。



第2段階「超深度掘削」


第3段階「プレート境界断層の採取」


すでに掘進している海底下2880m付近から斜めに枝孔を海底下3700mまで掘削し、ケーシングパイプを設置する。


このときのケーシングパイプは、エクスパンダブルケーシングとよばれる掘削孔内に挿入してからその内径を拡張できる特殊なものを使用する。


これにより、孔壁を早めに保護して崩壊を防ぎつつ、海底下深く目的深度まで掘り進めることができるようにする。


さらに、海底下4500mまで掘削し、ケーシングパイプを設置する。


その後、海面下4500mまで掘削しながら、深度4700m付近でコア試料を採取し、この先は掘削目標となる海面下5200m付近まで掘削し、このあたりに存在すると予測されるプレート境界断層を見つけ、その後、サイドトラックして断層のコア試料を採取する。



第4段階「船上分析」


航海中には掘削作業やコア試料の採取と並行して、分析作業が行われるが、入港後も引き続き、船上のラボではコア試料の分析を行い、地震発生帯を引き起こすと考えられているプレート境界断層の解明につなげていく。



掘削によって巨大地震が誘発する可能性


これについて、地球深部探査船ちきゅうは次のように答えています。


地震は断層運動として捉えられていますが、その断層運動のエネルギーは断層面で接した所での歪の蓄積と考えられています。


その歪は断層面の摩擦強度に依存していて、特に地震の時にのみ動く場所を「アスペリティー」と呼んでいます。


このアスペリティーでの摩擦強度が弱まる現象が起こったときに地震が発生します。


結論としては、掘削によって巨大地震が引き起こされることはありません。


掘削が仮にアスペリティーを掘削したとして、アスペリティー全体の破壊を進行させるような影響、特にアスペリティー内の圧力を上昇させ、破壊を引き起こすこと(摩擦強度が小さくなる)とは、掘削は逆のセンス(圧力は下がる)です。


何よりもスケールとしてはアスペリティーが数十キロオーダーあると考えられているのに対して、掘削孔は直径20センチ程度ですので、針でつつくよりも小さい穴をあける事と同じです。


全く無視できると考えてよいかと思います。


それでも「ちきゅう」は掘削前に様々な探査技術を使って、地下の状況を特定し、その上で掘削計画を立案し、様々な専門家の評価を受けて掘削を行っています。



掘削が直接、大地震を引き起こすことはまずないと思います。


しかし、地中への廃水処理が地震を頻発させたり、資源の採掘が地震を引き起こす原因になったり、ダムの建設によって地震が引き起こされたりと人為的な地震は実際に数多く発生しているのです。



例えば、2008年に中国四川省で発生したマグニチュード7.9の巨大地震は、約8万人もの死者・行方不明者が出ました。


この地震は断層線の上に建設された、紫坪埔ダムに蓄えられた3億2000万トンの水の重量が引き金になったと考えられています。



また、石油・天然ガス採掘のための水圧破砕法が原因とされる地震も米国では多く発生しています。


米地質調査所によると、水圧破砕法が引き起こす地震には直接的なものと、作業の過程で排出される廃水によるものがあります。


この廃水は再び地中に高圧で戻されるため、さらに奥深くの岩盤の断層を滑りやすくしてしまうといいます。



この他にも、核爆発による地震や、工事現場での地震なども確認されています。


英ダラム大学の地球物理学者マイルズ・ウィルソン氏は次のように説明しています。


人間が行う事業はすべて、地殻の活動に影響を及ぼします。


たとえば、地中に大量の物質を加えたり取り去ったりすれば、地球がその変化に反応するのは当然のことで、その反応が地震になることもあるわけです。


水の重量が加わったり、地中へ水を廃水したり、鉱石や石炭を採掘するだけで大きな地震が発生しているという事実があります。


また、地球の深部については、まだ科学ではどうなっているかわかっていない部分もあります。


地震の発生に関しても、はっきりとした原因やメカニズムはわかっておらず、現代の科学ではわかっていない部分のほうが圧倒的に多いのです。


そういった事実があるにも関わらず、南海トラフ巨大地震の発生帯という危うい領域で、海底下5000メートル以上も掘削し、そこに水やCO2を注入したりして、何も起こらないというのは、考えにくいのではないでしょうか。


もちろん掘削が原因であるという確証はないのですが、実際に掘削を開始してから、周辺で無感地震が群発的に発生したことも気になります。


しかし、順調にコアの採取に成功すれば、また新たな発見が多く見つかり、それをきっかけに科学は進歩していくことになるかもしれません。


そのために何らかの原因で地震が誘発することはあっても、被害地震になってしまうことがないように願います。


プレート・テクトニクス誕生までのプロセス - 南海トラフ地震警戒情報